Pro's way

住宅照明のヒミツ

28

2022.02

古川 愛子

Interview

提案を実現させるデザインの力。ミサワホーム 高井戸展示棟 古川 愛子

Aiko Furukawa
住宅デザイン部 東京オフィス
《 調光 》 とは何でしょう。 
それは・・・。

明るさを自由に “ 調節 ” できる機能です。

《 色温度 》 とは何でしょう。 
それは・・・。

太陽 ( 自然 ) 光や、人工的な照明などの光源が発する “ 光の色 ” を表わすための尺度のことで、単位はケルビン [ k ] です。
『 温度 』 といっていますが、光源の温度や明るさとは “ まったく ” 関係がありません。

《 コロナ 》 とは何でしょう。 
それは・・・。
太陽コロナ

『 光冠 ( こうかん ) 』 といって、太陽や月に薄い雲がかかったときに、それらのまわりに、青白い光の円盤が見える “ 大気光学現象 ” のことです。 英語で corona とつづります。

《 ウイルス 》 とは何でしょう。 
それは・・・。

私 ( 生物 ) たちも地球も、世の中は “ 微生物 ” で成り立っています。
微生物の中には 「 細菌 」 と 「 ウイルス 」 とがあって、ウイルスは細菌の 30分の1 しかありません。
とても小さくて目には見えないのに、微生物たちも生きています。

『 生き物 』 だ!と規定するには・・・。

  • ・ 遺伝子を持っている
  • ・ 細胞がある
  • ・ 代謝エネルギーを生成する
  • ・ 自己複製する

と、いう 4つの最低条件があるのですが、ウイルスはなんと!この“ 生物の条件 ” を満たしていません。
一方の細菌は生物です。

ウイルスは遺伝子を持ってはいるのですが、細胞がありません。
代謝エネルギーも持っていないから、複製もできません。 ところが、ほかの生物を利用して “ 自己複製 ” するという特殊能力を持っていて、それによって 『 増殖 』 して生きています。

2019年末から、中国の武漢 ( ぶかん ) 市で、肺炎患者が集団発生して“ 新型 ” ウィルスが見つかりました。 構造が、太陽のコロナ 「 光冠 / 王冠 」 に似ていることから、ラテン語由来の 「 コロナ 」 と名付けられました。 これが 『 コロナウイルス 』 の正体です。

細菌とウイルスの増殖の仕組み

『 緊急事態宣言 』 やら、一年延期された 『 東京オリンピック 』 やらなんやらの、すったもんだがあったおかげで 「 巣ごもり 」 や 「 おうち時間 」 という言葉が生まれ、多くの方々の “ ライフスタイル ” が、少なからずとも変化したのではないでしょうか?

そういう私 “ 吹抜けキャンディーズの古川愛子 ” も 「 テレワーク勤務 」 にさま変わりしました。そこで今回は、新しいライフスタイルを提案する 《 ミサワホーム 》 さんの 『 高井戸展示棟 』 をご紹介します。

【 機能的価値 】 と 【 美的価値 】 のデザイン。

高井戸展示棟は、併用住宅として、 「 ABW 」 Activity Based Working “ 内容に応じて最適なワークプレイスを選ぶ ” という設計主旨のもと、平日は 『 働く場 』 として活用し、休日には地域の人々がカフェに集まり 『 交流する場 』 となるような 「 シェアオフィス空間 」 Sheared office space が、設けられています。

天井面は 230mmピッチで等間隔に並べられた 『 ルーバー天井 』 が仕上げられていて、吊り下げられた 「ルーバー」 によって、まずは、エアコン等の設備機器が隠されています。ついで、このエアコンを避けた位置にあたる 「 ルーバーとルーバーの間 」 へ 『 配線ダクトレール 』 を設置する。 という 【 機能的価値 】 と 【 美的価値 】 双方の “ デザイン面への配慮 ” が見られます。

また、別注仕様で “ 黒塗装 ” に仕上げられたスポットライトが、約 350mmピッチで 『 配線ダクトレール 』 に設置されていて、手元面での明るさは 《 平均照度 500Lx 》 以上が、確保されている。 さらに、直下の 「 床に対しての明るさ 」 だけではなく、目線の 「 視覚的な明るさ 」 も 《 飾り棚の間接照明 》 によって、しっかりと確保されています。

『 調色 ・ 調光タイプ 』 で空間を自在に変幻させる。

スポットライトの 《 色温度 ( 光の色味 ) 》 は、
「 昼白色 5000K ~ 電球色 2700K 」 の範囲を “ 11段階 ” で設定可能。

『 働く場 』としての使用時は、昼白色 5000K
『 交流する場 』としての使用時は、電球色 2700K

と、することで、空間の印象を “ 別の顔 ” へと変幻させることができます。

  • 昼白色5000K 『 働く場 』 としてのオフィス
  • 電球色2700K 『 交流する場 』 としてのオフィス

こちらで採用した、光の色味と明るさをかえる 『 調色調光コントローラー 』 は、好みのシーンを記憶し、記憶させたシーンをワンプッシュで呼び出せる機能つき。 操作が簡単なうえに、 “ 信号線が不要 ” だから「 電気工事の施工 」 も簡単。 なので、
“ 吹抜けキャンディーズの古川愛子 ” は、これをイチオシします!

使用器具

  • スポットライト

    DSL-CD204W(別注:黒塗装)

  • コントローラー

    DP-CD01

どんな物質でも、加熱すると光を発し、温度により光色が変わる。
それが “ 色温度 ”

《 調光 》 は 「 光の明るさ 」 を変える機能のことで、私たちにもなじみのある言葉です。
《 調色 》 は 「 光の色 」 を変える機能で、その光の色のことを “ 色温度 ” といいます。

光の色にも 『 単位 』 があって、ケルビン [ k ] という記号であらわします。 しかしこれが、少しややこしいので、順を追って説明します。

『 鉄 』 を加熱していくと [ 橙 ( だいだい ) 色 ] ⇒ [ 黄色 ] ⇒ [ 白色 ] へと変化し、さらに加熱温度が上昇すると
[ 青みを帯びた白色 ] になっていく。 この色の変化を観察して、 《 温度には色がある 》 ということが判明したのは、19世紀後半のドイツでのことでした。

この 《 温度と光色 》 の関係をあらわにしたのが、キルホッフという物理学者で、鉄の代わりに “ エネルギーをすべて吸収する ” という、架空の物質である 【 完全黒体 】 というものを考えだしました。

人工光源にあてはめた色温度

【 完全黒体 】 は加熱すると光を発していきます。
そして 「 温度 」 によってその光色が変化します。

この関係を “ 数値 ” であらわしたものが 『 色温度 』 と呼ばれるもので、別名を 「 熱力学温度 」 または 「 絶対温度 」 といって、この温度の単位が ケルビン [ k ] になる。

「 地球上の生物が生存することができない 」 温度。
「 これ以上さがることはない」 温度。

と、される 《 絶対零度 ( - 273° ) 》 から加熱をはじめます。 このときの 【 完全黒体 】 の色、すなわち -273° での “ 見た目 ” の 『 温度の色 』 が、ゼロケルビン [ 0k ] です。

『 色温度 』 は単なる “ 数値 ” でしかありません。
実は 『 温度 』 といっていますが、光源の温度や明るさとは “ まったく ” 関係がありません。

ところが 《 絶対零度でも死なない生物 》 がいます。 
それは、世界最強の生物 『 クマムシ 』
なんと -273°では死なない。 それどころか、沸騰水より熱い 151°でも死にません。世界一深い「 マリアナ海溝 」 の水深 10kmをはるかにしのぐ、水深 750kmに相当する 75,000気圧にも耐え、さらには、ヒトの半致死量の 1,000倍にあたる放射線にも耐えるから、宇宙空間でも死にません。 でも、残念なことにクマムシは “ 押し潰す ” と死んでしまいます。

体を脱水した 「 乾燥睡眠 」 状態では、クマムシは以上の条件でも死なない。
だけど、潰すと死んじゃう。

「 デザイン 」 は 《 提案する 》 ためにあるのではない。
「 デザイン 」 は 《 実現させる 》 ために頑張るものだ。

この言葉は、師匠の タカキヒデトシ54 の受け売りですが、私たちは 《 モデルルーム 》 だから “ 力を入れて ” 頑張っているのではありません。 やはり 《 実邸 》 で採用されなくては、そのデザインは 「 無意味なもの 」 に終わってしまうからです。
そこで、同じく 《 ミサワホーム 》 さんの物件で 『 調色 ・ 調光タイプ 』 が採用された 《 実邸 》 を取り上げてみたいと思います。

「 おうち時間 」 が増えたことで、 LDK は 『 さまざまな用途 』 に使われるようになりました。
食事や団らん、テレワークや子供の勉強といった “ 作業のための光 ” も求められています。
この 《 実邸 》 の ダイニング ・ キッチン においては、 「 間接照明 」 と 「 ダウンライト 」 に、 『 調色 ・ 調光 』 が可能な 《 6回路 シーンコントローラー 》 を組み合わせて計画しています。

シーン別にワンタッチで切り替えが可能。
色温度は、昼白色 5000K ~ 電球色 2700Kの範囲を “ 無段階で設定 ” できる。

例えば、昼白色 5000K ・ 明るさ 100%
例えば、電球色 2700K ・ 明るさ 70%
例えば、電球色 2700K ・ 明るさ 30%  と、いうように、

さまざまな 「 生活シーン 」 に合わせて、最適な光の環境を “ きめ細かく ” 演出できます。

  • 昼白色 5000K 100%
  • 電球色 2700K 70%
  • 電球色 2700K 30%

使用器具

  • まくちゃん 調光調色

    DSY-5261FW

  • ダウンライト

    DDL-5342FW

  • シーンコントローラー

    DP-39093

「 リビングの間接照明 」 には 『 楽調タイプ 』 の間接照明を採用。

『 楽調タイプ 』 とは、照明を “ 点灯している状態 ” から、壁スイッチで 「 OFF → ON 」 と “ 2回 ” パチパチと押すだけで、簡単に 「 昼白色 5000K 」 と 「 電球色 2700K 」 の “ 2色 ” が、切り替わる機能です。

《 壁スイッチ 》 だけでの “ 簡単操作 ” なため 『 提案 』 しやすく、
《 調色タイプ 》 の中では “ 最も安価 ” なため 『 実現 』 しやすいシリーズ。

  • 昼白色 5000K 100%
  • 電球色 2700K 60%

使用器具

  • まくちゃん 楽調

    DSY-4506FWG

  • 調光器

    DP-39672G

約 3000mmの高天井のため、3方向に間接照明を入れて、しっかりと明るさを確保しました。
「 生活シーン 」 における “ さまざまな用途の多様化 ” を考えた時、すべての照明手法の中で、最も 『 均斉度の高い ( 照度のムラが無い ) 』 照明手法である 《 間接照明 》 をメインにしたプランです。

《 均斉度 》 ってなに?

ここでもういちど 『 高井戸展示棟 』 に戻って 《 均斉度 》 について説明します。

高井戸展示棟の LDKでは、天井面を折り上げて、その四方に照明器具を入れる 《 四方間接照明 》 としています。
部屋全体にできるかぎり “ 均等 ” に光を回していくことが目的で、この間接照明から放たれた光が、天井面を反射し、壁や床や家具などにも 「 バランスよくつり合いのとれた光 」 が、降りそそいでいくことになります。
“ バランスよくつり合いのとれた ” という点が重要で、ただ天井面が明るいのではありません。

「 どの場所でも “ 適度な照度 ” を得ることがきる 」

と、いうのが 《 均斉度の高い》 照明です。
均斉度が高ければ 「 生活シーン 」 における “ さまざまな用途の多様化 ” に対応できます。
仕事スペースをつくったり、食卓の横に勉強机を置いたり、家具の配置を変えても問題なく、自由に空間をアレンジすることができる。

『 高齢者施設 』 などでは 《 間接照明の均斉度 》 を生かした照明が “ いち早く ” 採用されてきましたが 「 一間続きになってしまった一般住宅の LDK 」 にこそ 《 均斉度の高い間接照明 》 が必要になる。 として、 “ 20年以上前 ” から 『 住宅のベース照明 』 に 《 間接照明 》を 「 とりいれ続け、発展させてきた 」 のが、師匠の タカキヒデトシ54。

私たちもその《実現》にむけて「デザイン提案」することを頑張っています!

テレワークが加速する。 ホームオフィスを設える。

『 高井戸展示棟 』 では 「 マルチプレイス 」 Multi place “ いくつもの要素が合わさった場所 ” という意味の空間が設定されています。一連の 「 なんやかんや 」 で “ テレワーク ” が定着する中《 新築時に書斎をつくる 》方が増えているためで、日頃は「 書斎や趣味の部屋 」として使用し “ 万が一 ” 体調を崩したときなどには「 隔離した療養部屋 」として使用できるように設定されています。

ここでは、デスクの 「 壁際から光が降りそそぐ 」 間接照明を採用。 ついでに言っておくと、壁際の間接照明の手法のことを 《 コーニス照明 》 と呼びます。
このコーニス照明には “ 特別な LED ” を搭載させた照明器具を用いました。その特別なLED の名は『 Vitasolis™ 』

徳島県に本社をおく 《 日亜化学工業 》さんの LED なのですが、一般的な LED と比較した場合 “ ストレスの軽減および作業効率向上 ” が、非常に高く認められているものです。
そこで、特別な LED 『 Vitasolis™ 』 を、弊社の 「 ダブルライン 」 という照明器具に別注対応して載せ替え “ ストレスの軽減および作業効率向上 ” を目指した 「 マルチプレイス 」 に設えました。

壁際から光が降りそそぐ。 その収まりを考える。

《 コーニス照明 》 の場合一般的には、隠した照明器具の 「 ランプが丸見え 」 となってしまうのがイヤなので、下図のように “ 側面付け ” をすることが多いようです。 けれどもこの場合、

「 壁面への光 」 が中心となり “ 上の方ばかり ” が照らされ、
「 机上面への光 」 が “ 直接的 ” に届くことはありません。

「 直接的に光をあてない 」 から 《 間接照明 》 というので、ちょっと矛盾はしていますが、 『 Vitasolis™ 』 の光の場合 「 直接光を浴びる 」 方が、よりその効果を発揮します。
そのため、コーニス照明の収まりを工夫しました。

直接的に光を机上面に落とすため、照明器具は “ 天井付け ” とし、それでもやはり 「 ランプが丸見え 」 となってしまうのがイヤなので、照明器具を 「 幕板で半分だけ隠す 」 収まりとしました。 これで半分は 「 直接光 」 が降りそそぐため 『 Vitasolis™ 』 の光を効果的に浴びることができるようになります。

間接照明だけでなく、ベースライトにも 『 Vitasolis™ 』 を搭載できますので、用途に応じてお問い合わせください。

今回は “ 吹抜けキャンディーズの古川愛子 ” が、コロナ禍の 「 なんやかんや 」 で、実際に経験して考えた 《 照明の在り方 》 についてご紹介しました。 1日も早いコロナ感染の収束と、世界規模での終息を祈るばかりですが、たとえ感染が収束したとしても、私たちの暮らし方は以前のようにはならないように思います。

この経験を活かし、柔軟な考え方で、「 新しい住まいづくりをサポート 」 していきたいと思います。
個別のご質問ご相談なども、どうぞお気軽にお問合せくださいね。 オンラインセミナーやオンライン研修なども、リクエストお待ちしています。

最後に “ 吹抜けキャンディーズ ” ってなに?

“ 吹抜けキャンディーズ ” は 《 住宅デザイン部 》 の中から選ばれた 「 吹抜け照明 」 を特化して研究している、というか、悩んでいる三人組の “ ユニット名 ” で、そのなかの一人が、私 「 古川愛子 」 です!

活動の場を拡大中!デビュー6年目 吹抜けキャンディーズ

『 高井戸展示棟 』 は、納入事例集にも掲載しています。
その他の現場も “ 見どころ満載 ” ですので、ぜひご覧ください。
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ご精読ありがとうございました。