Pro's way

住宅照明のヒミツ

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2020.04

照明⼠ 今泉のお宅探訪

今泉卓也

Interview

アメリカ・ニューヨーク州にある〝ブルックリン″、この地を発祥とするスタイルのことを「ブルックリンスタイル」と言います。元々このエリアには工場や倉庫、古いアパートが多かったため、またの名を「インダストリアルスタイル」とも呼ばれています。近年日本でもカフェのインテリアなどで、流行してきているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

※「ブルックリンスタイル」イメージ

古くて価値のある〝ヴィンテージ″感の強い素材であるレンガやタイル、モルタル(コンクリート)、無垢古材が多く使用されているのが特徴で、家具や照明器具には主に、黒や濃茶、グレーなど「無彩色のダークカラー」が使われます。

こんにちは!「照明士 今泉」です。今回は、日本の西海岸(?)〝新潟″に上陸したブルックリンスタイルのリフォーム物件をご紹介します。

築10年の自宅を大改装した、大光電機新潟営業所の伊藤真悟部長のお宅になります。
こちらが、伊藤部長、その人です。

海をこよなく愛し、サーフィンや釣りが趣味。日本の西海岸では飽き足らず、アメリカ西海岸にも訪れるほどだとか。だからリフォームのイメージは、海がテーマの「西海岸風」。だったのですが、、、インテリアショップで見かけた茶色の革張りソファーにハートを撃ち抜かれ、「このソファーを活かせるのは〝ブルックリンスタイル″しかない!」と、インテリアテイストを変更しちゃったそうです。

では、伊藤邸にお邪魔します。まずは玄関から。

天井や床に使用している重厚な木板は、東南アジアやオーストラリアなどに広く分布しているマメ科の広葉樹「メルバウ」材。しかも床板は「ヘリンボーン」と言う施工者泣かせの模様張り。ちなみにヘリンボーンとは、開きにした魚の骨に似ていることから、ニシン(herring)の骨(bone)という意味だそうです。

さらに、壁の仕上げにもこだわっています。明度を落としたダークカラーの壁にするために、砂壁状仕上げ材ジョリパットへ〝墨″を混ぜ込み、エイジング(ageing)っぽさ、すなわち〝時を経た″ような風合いを醸し出しています。

こんなシャープな空間ですから、当然のことながら照明にもこだわりましたよ。店舗などによく使われる「スイングショット」2灯タイプを採用。板張りの天井材をできるだけそのまま見せたいので、天井のセンターを避けて配置しました。1灯は床を1灯は壁の絵を照らし、全体的に明るさを取らないことでメリハリのある空間を演出しています。この絵は婚約の記念に奥様へプレゼントした思い出の品だとか。玄関からこだわりモリモリです。ちなみにこの「スイングショット」は、断熱施工天井には非対応ですので、ご注意くださいね。

LZA−91991
2灯用 埋込穴100×200
LZY-91985YBE ×2
ダウンライト本体
LZA-92809 ×2
非調光用電源(標準出力電源)

続いては17.5畳のLDKです。
伊藤部長の内装イメージがまだ「西海岸」だったとき、私が最初に提案したプランは、天井面を明るく照らす間接照明「コーブ照明」でした。

<参考> 一般的なコーブ照明。白く明るい印象。

それから数週間後、内装のデザインが固まってきた伊藤部長から、「天井・床はメルバウで、床の張り方はヘリンボーンね。壁は墨入りのジョリパット。レンガ調のタイルも張るよ。内装材の色味? ダークトーンで暗めだよ♡」って・・・それってもしかしてブルックリンスタイルじゃないの~!?

※「ブルックリンスタイル」イメージ

皆さんご存じですか?ブルックリンスタイルにコーブ照明は似合いません!全体を明るく照らすコーブ照明ではブルックリンスタイルの重厚感を損ねます。この場合は、天井面への明るさを抑えながら照明計画をするのが大事なのです。
 ということで「空間全体は照らさない・でも明るさ感は必要」と判断し、壁面を照らす「コーニス照明」へと急遽プランを変更。

それでは、Before・Afterを見ていただきましょう。

和室をつぶしてできたリビング空間です。Beforeでは、ダウンライトでまんべんなく明るく照らされた空間でしたが、コーニス照明の柔らかい光によって、壁の質感を際立たせる空間へと生まれ変わりました。

  • Before
  • After

こちらはキッチン。システムキッチンとレンジフードは元のままですが、ばっちりブルックリンスタイルになっていますね。

  • Before
  • After

そして、この「コーブ」から「コーニス」への変更が 空間の完成度を高めたのでした。

あ、ちなみに、間接照明は当然「温調」です。「また温調?」という声が聞こえてきそうですが、はい、今回も「温調」入れてます。日本中の皆さんに知っていただけるまで、私はオシ続けますよ~。
 さて、その「温調」ですが、“光の色味”いわゆる「色温度」が段階的に変化していく商品シリーズです。100%点灯から1%の明るさまで自由自在なのですが、明るさを弱めていくと2700Kの電球色から2000Kのキャンドル色にまで色味が変化していきます。
 この温かな色味、写真で伝わりますか?白熱灯を調光した時と同じように、赤みの度合いが自然に増していくのです!伊藤部長のハートを見事に撃ち抜いたソファーの色にも、ピッタリ寄り添っていますよね。

白熱灯風調光 温調

検証

ブルックリンスタイルは「温調」でキマリ!

「温調」で調光すると、白熱灯のように色温度が変化して、とても落ち着いた雰囲気になります。
ただ暗くなるだけでなく、暗さの中に“ほの温かさ”があるんです。
素材の雰囲気もグンとアップ。おうちがまるでホテルのような空間に。
ぜひご検討くださいね。

  • ●クロス(柄)

  • ●クロス(木調)

  • ●タイル(レンガ調)

<参考> 一般的なLED(2700K)の調光

  • ●クロス(柄)

  • ●クロス(木調)

  • ●タイル(レンガ調)

最後の最後に、残念なことが一つだけ・・・。
「おしゃれで落ち着いた雰囲気がいいよね」と、ご夫婦の意見が合致したはずだったのですが、奥様から唯一〝不評″を買ってしまった場所があるのです。

「 洗濯機の中が見えない!」
・・・奥様のハートは、撃ち抜き損ねちゃったようですね。

ブルックリンスタイルの伊藤邸、いかがでしたでしょうか? 今回の私の学びは、①ブルックリンスタイルに全体を明るく照らすコーブ照明は似合わない。②ブルックリンスタイルこそ、「温調」が最適!という2点です。

私の「お宅探訪」、これにてSeason1は終わりです。また新しいネタを仕入れてご紹介しますので、Season2を楽しみにお待ちくださいね。
では、また。アディオ~ス!