Pro's way

住宅照明のヒミツ

02

2016.08

外構照明の「庭屋一如」を究める、LEDの若旦那

花井架津彦

Interview

まだ、外構の照明は後回し?

屋内外を同時にプランすることで、
お施主さま・設計士さんの理想を
実現させることができます。

Kazuhiko Hanai 庭屋一如

外構を含めた住宅照明を究めようと思ったのは、いつ頃、どういった理由で?

住宅照明デザインをはじめて9年になりますが、今から6~7年前でしたか、いつものように照明プランをご依頼いただいたんです。当時、僕がベストだと思ったプランを提案して採用いただいたんですけどね。竣工してから、物件を拝見する機会があって、照明ですから夜に見に行ったわけです。リビングの照明を全部つけて、なかなか良いなと満足していたところ、カーテンを開けてびっくり。リビングの開口の外に、キレイに植栽されたお庭があったんです。外構の照明は依頼されていなかったので真っ暗なわけですよ。でもそれ以前に、リビングの照明が窓に映りこんで、お庭がまったく見えない。ショックでしたね。庭スペースがあるとわかっていたら、きちんとお庭の見え方も考えた照明プランのご提案もできたのに…と。その苦い経験以降、設計士さんとコミュニケーションを密にとって、できるだけ屋内外セットでご提案させていただくようになりました。もちろん勉強もしましたし、数をこなすことで経験値もあがり、専門家としてセミナーなどでお話しできるようになりました。

「庭屋一如(ていおくいちにょ)」という言葉がよく使われますが…

元々は、数寄屋造りや茶室などの日本建築で使われていた言葉で、庭と建物の調和がとれて一体の空間になっていることを言います。日本家屋は多くが庭屋一如の考えのもと、自然とつながるように作られていたのですが、戦後の洋風化や都心での狭小住宅などが増え、言葉自体を耳にしなくなっていました。

それがまた、アウトドアリビングの流行や、癒し空間の演出などで、現代の「庭屋一如」が見直されてきているのです。例えば、リビングの大開口から続くデッキ空間にアウトドアリビングをつくることにより、その向こうに広がる庭が一体となって、リビングから庭の景観を楽しむことができ、かつ、夜の庭の照明設計も行うことによってデッキでの過ごし方も広がるなど、屋内外をセットで考えた方が暮らしを考えた照明計画をご提案できます。

「庭屋一如」を実践した照明設計

この写真は、設計士さんが床材、天井材、外構の壁と、素材感を統一し、「庭屋一如」にとことんこだわって設計された物件です。窓を境界に、内と外をシームレスにつなぐため、外構照明は器具を見せずに光だけを見せるように工夫しました。

室内:点灯 / 庭:消灯

室内:消灯 / 庭:点灯

こちらも同じ物件の2畳ほどの家事室の写真です。左が通常時、右が室内を消灯し庭の照明をつけた状態です。忙しい日々、家事を終えて、ちょっとホッとする時間を過ごせる贅沢な空間ができあがりました。

この物件は、設計当初から照明計画もスタートさせていただいたのですが、屋内外すべての照明のコストが総施工費の2%に納まっているんですよ。こうした「庭屋一如」の照明プランでも、ご予算に合わせて工夫できるので、諦めずにご相談いただきたいですね。

ズバリ、「庭屋一如」の照明プランを失敗しないための基本の考え方は?

内外の照度のバランスですね。室内が明る過ぎると、ガラスに照明が映り込んで庭は見えない。室内の照度を落として庭の照度を上げることで、「内」と「外」で明るさのバランスを整えて映り込みをなくすのですが、室内の照度を落とすと、どうしてもタスク照度が犠牲になってしまう。ここで力を発揮するのが調光機能です。リビングはくつろぎの時間もあれば、子供たちが勉強したり、来客を迎えることもあるわけですから、それぞれのシーンに合わせて必要な照度がとれるように調光するのがベストです。外構を含めたプランをする場合、室内は「温調」を提案します。映り込みをなくすために「低照度」を想定しますが、「温調」の白熱灯を調光した時の「低色温度」が加わってくつろぎの雰囲気が演出でき、そこに緑の景色を取り込むことで、非日常的な空間が生まれます。間接照明を入れる場合は、幕板なしで設置できる「まくちゃん」調光タイプを使うと便利ですね。

また庭を含めた外構は、何を照らすか、どう照らすかがポイントですが、「月のあかり」が大きなヒントになると思います。自然のものを自然に美しく見せる、やさしい穏やかなあかりです。上から下に照らすことで地明かりをとることができ、地面の砂利や下草、配置された石などがナチュラルに照らされます。木の根元からアッパーライトを当てることが一般的ですが、あれは懐中電灯で顔を下から照らすようなもの。樹木の影が外壁に汚く発生することがあります。しかもそれが落葉樹だったら、冬には枝だけをライトアップし、もの悲しい雰囲気になってしまいます。造園で言われる“作為なき作為”というのが理想ですね。「月のあかり」を実現するには、広角配光のグレアレススポットなどを使うとよいと思います。ここ数年、自分が使いたい、必要だと考えた器具をデザインするようになりました。今年の春には20品番の器具をリリースしています。数々の現場を担当させていただいた経験から、必要な工夫を盛り込んだ製品ばかりです。LEDの特性であるコンパクト性、省エネ、光に熱が出ない、などのメリットを活かし、価格も機能も充実していますので、外構照明は難しいと思われているコーディネーターさんにも、これらの製品をうまく活用してチャレンジしていただきたいですね。

  • DDL-4913YW (LIFE+2016-2017 P192/P557)
  • DWP-40123Y (LIFE+2016-2017 P570)
  • DOL-4826YS (LIFE+2016-2017 P571/P584)
  • DOL-4827YS (LIFE+2016-2017 P575)

これから外構照明を計画される方へ、メッセージがあれば教えてください。

DAIKOは早くから間接照明の普及に注力してきましたが、設計士さんがイメージされた美しい空間を生かすという意味で、外構を含めた照明プランでも、積極的に建築化照明の技法を取り入れていくべきだと思います。間接照明だけでなく、建築と一体化した広い意味での建築化照明ですね。また、狭いリビングを広く見せるために、ガラス窓にあえて光の映り込みをさせるという高度な照明テクニックもあります。このように、設計の課題を照明がクリアできることもありますので、照明計画は設計と同時にスタートされることをご提案します。外構はついつい後回しになってしまいがちですが、自然と調和した家づくりは大きなテーマですので、ぜひセットで考えていただきたいと思います。

DAIKOの大阪のショールーム“ライティングコア大阪”には、外構照明のシミュレーション部屋がありますので、大阪近郊の方は、お施主様とごいっしょにぜひお越しいただいて、実際の見え方を体感してみてください。もちろん僕に時間があれば、アテンドさせていただきます。

美しい庭の夜景を室内から眺める、そんな少しだけ贅沢な住まいのあかりを実現する、“室内も含めた総合的な視点”での照明計画をご提案させていただきます。住まいの「内」と「外」をつなぐライティングで、付加価値の高い住空間を一緒に作りましょう。

建築知識に連載中!!「住まいの照明設計塾」インタビュー動画