Pro's way

住宅照明のヒミツ

50

2026.2

⽥中 幸枝

Interview

2層吹抜けの照明計画に挑む、とある⽇の記録。 ⽥中 幸枝

Yukie Tanaka
住宅デザイン部  東京オフィス

吹抜けキャンディーズ・
タナカユッキーエがお届けします

みなさん、覚えていらっしゃいますか …?
「 タナカユッキーエ 」
そして東京オフィスの相棒「 フルカワアイコ 」
さらに “ ⼤阪の姐さん ” こと「 トミーワマサヨ 」
この3⼈は、DAIKO界隈で密かに、
【 吹抜けキャンディーズ 】と呼ばれています。

⽇夜「 吹抜けに明かりをどう落とすか 」で、
脳みそをぐるぐる回している、光と影の戦⼠たちです。

その中でも今回は、吹抜けキャンディーズの私、
タナカユッキーエ が執筆します。

照明計画 でいつも最初に⾔われること

それは決まってこの2つ。

「 ダウンライトはあまりつけたくない 」
「 でも、明るさはちゃんと欲しい 」

はい、出ました。設計あるある⼆⼤巨頭。
建築を邪魔せず、空間に照明を “ 溶け込ませ ”
なおかつしっかり明るさも確保する ――。
このジレンマ、私たち吹抜けキャンディーズにとっては、
もう“ ⽇常茶飯事 ” の難題です。
でも、これがまた楽しくて楽しくて仕⽅ないんです💕

そして今回の現場図⾯を⾒た瞬間

第⼀声は、もうこれしかありませんでした。

「 うぉ〜!」
「 ど、ど、どうしたらいいの!! 」

メインのリビング吹抜けが建物のど真ん中にドンッ。
その周囲を部屋たちがぐるりと囲む、という構成。
しかも2層吹抜け × 傾斜天井のハイブリッド仕様。
そして極めつけは ――
吹抜け天井トップの⾼さ 7,785 mm ! !
私の吹抜け計画史上、間違いなく “ 過去最⾼峰 ”
キャンディーズの誰に聞いても間違いなく“ ラスボス級 ” です。

7m 超えのラスボス吹抜けに、どう挑む?

さて、⽬の前に現れた ⾼さ 7,785mm の吹抜け。
もはや《 吹抜け 》というより、
“ 天へと吸い上げられる光の井⼾ ”
吹抜けキャンディーズのグループチャットにも、
私、タナカユッキーエ は即座にこう叫びました。

すると、
フルカワアイコ が冷静に「 とりあえず落ち着いて 」と送り、
トミーワマサヨ「 その⾼さに投光器⼊れたら私が光る 」と、
謎の⾃信を放ってきます。

―― はい、この温度差が吹抜けキャンディーズらしさ です。
でも、悩んでいる時間はありません。
展⽰場の照明計画は、常に “ 締切 ” という影に追われているのです。

求められるのは、建築に溶け込む “ 気配の照明 ”

今回クリアしたい条件は、この⼆つ。

「 ダウンライトは、なるべく使いたくない 」
「 でも空間としては明るさが欲しい 」

はい、これ絶対出ます。
吹抜けキャンディーズにとっては、
“ ⾚信号でも⽌まらない救急⾞ ”
ぐらいの頻度で、登場する条件です。

梁とのたたかいは避けて通れない

吹き抜けに現れる梁という梁はこう主張してきます。

「 影、落とすけど …… 何か問題でも? 」

もちろん問題しかありません。
空間を美しく照らすためには、
どう光を広げ、どう影を作らせないか。
梁との駆け引きは避けて通れない核⼼です。
そこで私たちは “ 光を置く” のではなく、
空間の線や⾯にそっと寄り添わせて漂わせる光を
基本⽅針として考え始めます。

たどり着いた答えは ...

何度もなんども、図⾯を回し、何度もなんども、⽴⾯を⾒直し、
頭の中で仮想の太陽も照らし、光の⾓度もシミュレーションして ――
最終的にたどり着いたのは、

「 ⽕打ち梁の上端に “ アゴ ” を造作して、コーブ照明を仕込む 」
というルート。

本当は吹抜けの壁をふかして、
きれいに照明ラインを通したかったのですが、
それをすると2階の床⾯積が削られる問題が出てしまう。
ICさんも設計さんも、⾸を縦に振りません。
だからこそ、建築の形を尊重しながら
“ 光の帯 ” をそっと空間に忍ばせる納まりです。
そして光が決まれば、次に気になるのは「 光が当たる⾯ 」
つまり “ 壁 ” です。

さてさて、次は、壁のことについて

今回の壁は【 シラス壁 】

⽕⼭灰が堆積した⾃然素材を使ったぬり壁で、
調湿や消臭効果もあり、ナチュラルで趣のある質感を楽しめます。

シラス壁
火山噴出物が原料。ザラッと“土っぽい”質感。
調湿・消臭が非常に強い。
漆喰壁
石灰が原料。ツルッと白く、和洋どちらも合う。
耐久性が高く、上品でスッキリ。
珪藻土壁
海や湖の珪藻の殻が原料。塗材として安定した万能型。
調湿が得意でやさしい表情。

漆喰壁 の⽩く滑らかな明るさや、珪藻⼟壁 のマットで健康的な、
雰囲気とはまた違った、ざっくり⼟っぽい質感が特徴。
シラス壁は⼿で触りたくなる、そんな⾃然な味わいがあります。
インテリアは 北欧テイスト をミックスして、
上質で⼼地よい空間に仕上げています。
当初の打ち合わせでは【 ジャパンディ 】で、
⼥性らしくくつろげる空間というキーワードがありました。
《 北欧のテイスト 》は、
⾃然素材や⽊の温もりを⽣かし、明るくシンプルで機能的。
『 ⽇本のテイスト 』は、
和の落ち着きや静けさ、素材感や陰影を⼤切にした繊細な美しさ。
【 ジャパンディ 】とは、北欧の明るさと機能性に、
⽇本の上質な素材感や静けさを融合させた、
和洋折衷の洗練された空間。

今回の吹抜けも、やたらめったら器具は付けません

明るさと柔らかさを両⽴させる “ 間接照明⼀本勝負 ”

切り妻形状のトップが天井中央じゃないうえに、
⽕打ち梁が四カ所も「 どうも、こんにちは 」
と存在を主張してくる …。

そこでコーブ照明を四⽅からグルッと回し、
建築の形をすっきり⾒せることにしました。
吹抜けキャンディーズ的には、
「 光よ、空間よ、ひらり舞え!」とつぶやく瞬間です。

するとどうでしょう。
天井は傾斜しているわ、トップライトはあるわと、難題だらけなのですが、
四⽅から光が回るおかげで、⾒せたくない影は “ 光のカーテン ” の向こうへスッと消え、
美しい光の広がりだけがふわりと残りました。

で、⾒事に⽟砕された “ 最初の提案 ” は、
⽕打ち梁を丸ごと飲み込んでしまおう という “ ふかし壁作戦 ” でした。
「 無駄な線を⼀掃して、キレイに照明ラインを通せるんじゃない? 」
と、キャンディーズ内でひそかに期待された《 幻のプランA 》です。

実際の現場写真

最初の提案 《 幻のプランA 》

けれど、ふかし壁を2階の床まで伸ばしてしまうと、
通路は「 ちょっと … すみません … 通りますね … 」
と⾔いたくなるレベルまで確実に細くなります。
この “ 通路が痩せる問題 ” が引っかかり、
実は私の中では、なかなか条件がそろわず、
なかなか通らない提案でした。

そこで視点を切り替え、壁ではなく、
⽕打ち梁の上端にアゴを造作してもらいました。
“ そこへコーブ照明を仕込む ” という新ルートです。
空間を変えず、光の通り道だけを変える。
こうして⽣まれたのが “ 柔軟な⽅向転換 ” でした。

この⽅法が結果的に、
シラス壁 の美しさをより際⽴たせる⼀⼿になったのだから、
設計の世界は本当に⼀⼨先がミラクル です。

最後にカラフル光ショー

今回の展⽰場では、 ゲーミングルームの “ ⾊変化ライティング ” を体験できます。
と、光が順番に切り替わるたびに、
部屋全体がまるでゲームの世界へワープしたような臨場感に包まれます。

住宅でも、ちょっと贅沢な案件では、
「 家でも⾊の光を楽しみたい!」というご要望がチラホラ。
背景には、店舗で⾒かける照明のトレンドの影響もあるみたいです。

【 藤島建設モデルハウス|満ちる家 】 には、
弊社の照明器具をたっぷり採⽤いただいています。

光の演出はもちろんのこと、
器具そのもののデザインも、
ぜひじっくりご覧ください。
詳細はこちら

はい、この温度差が
吹抜けキャンディーズらしさです

吹抜けキャンディーズ・
タナカユッキーエ