Pro's way

住宅照明のヒミツ

46

2025.06

安部 真由美

Interview

もうダウンライトは使わない?! ライン照明活用術 安部 真由美

Mayumi Abe
住宅デザイン部  大阪オフィス

美しい照明計画の秘訣は『 余白 』に有り!

同じ照明器具を使っていても【 どこに配置するのか 】によって、
空間がウソのように “ まったく違って見える ” ことがあります。

「 スッキリ 」や「 シンプル 」といった言葉で形容されるダウンライトですが、
配置の仕方しだいでは煩雑な印象にもなってしまいます。

分散配灯

集中配灯

天井のいたるところに取付けられたダウンライトは
ゆとりがなく、窮屈な印象です。
「 人 」も「 照明 」もゆとりがある方が心地いい。

天井面に照明器具のない『 余白 』をつくることが、
美しい照明計画を考えるときの秘訣です。
その『 余白 』【 ライン照明 】でつくった、
3 つの事例を『 安部 真由美 』がご紹介します!

天井の『 余白 』の作り方

PLAN 01 . 天井中央付近に【 ライン照明 】を配置

  • DDL - 6234YWG
    グレアレスダウンライト

  • DBL - 5594LWG
    アーキテクトベースラインミニ L1495

間口 4550 mm の空間に【 ライン照明 】
一列で配置。天井の中央を軸にすると
《 レンジフード 》【 ライン照明 】
距離が近づいて、壁に不要な影が
出てしまいます。
ここでは、空間を
間口 3640 mm + 通路 910 mm と捉えて、
通路側には存在感のない
グレアレスダウンライトを配置しました。

間口 4550 mm

天井中央を軸にすると、
照明とレンジフードの
距離が近すぎるために
フードが照らされて、
「 影 」が発生します。

間口 3640 mm + 通路 910 mm

間口 4550 mm の場合、
【 間口 3640 ㍉ 】+【 通路 910 ㍉ 】と認識することができれば、ライン
の中心はシンクのセンターに合って
きます。照明とフードの距離が取れ
るので、フードの影は薄まります。

間口 3640 mm + 通路 910 mm

通路側に存在感のない、
グレアレスダウンライト
を配置し、光の偏りを解
消します。

【 ライン照明 】に向いてる器具の条件

  • ① 発光面がきれい
  • ② 継ぎ目が目立たない

器具が見えないように “ 隠す ” 間接照明とは違って
【 ライン照明 】は発光面を “ 見せて ” 使う
照明手法なので、使う照明器具は、
「 発光面がきれい 」で、
「 継ぎ目が目立たないこと 」が、条件になります。

残念ながらこんな器具は向いていません ⤵

発光面が均一ではなく粒々している

器具の端まで発光していないと継ぎ目が沈んで薄暗くなる

【 ライン照明 】充実のラインナップ!

コンパクトライン使用

アーキテクトベースライン使用

D.Styleカタログにはサイズ違いで
3種類を掲載しています。
住宅の「 主照明 」として使えるのは
アーキテクトベースラインミニ
しっかりとした明るさが欲しい時は
アーキテクトベースラインを使います。
コンパクトラインは灯具が小さく、電源別置。
明るさは控えめなので飾り棚のような
「 演出 」に適しています。

器具名称 コンパクトライン電源別置 アーキテクトベースラインミニ アーキテクトベースライン
器具サイズ 幅 12 ×高 16 mm 幅 23 ×高 46 mm 幅 41 ×高 69 mm
明るさ
(L=1200)
601 lm 1800 lm 3210 lm
埋込
最小施工寸法

※オプション取付台使用時

PLAN 02 . 【 ライン照明 】を壁に寄せて「 コーニス照明 」のように使う

  • DDL - 6238YWG
    グレアレスユニバーサルダウンライト

  • DBL - 5592LWG
    アーキテクトベースラインミニ L895

壁に寄せて配灯すれば
『 余白 』がうまれる

鉛直面を照らすことで空間を
明るくみせ、天井に『 余白 』
つくった事例です。
アーキテクトベースラインミニは
見せてもきれいな発光面ですが、
眩しさを感じにくいように
器具高さよりも少し深く天井を
折上げています。

私たちは常に現場検証しています

【 ライン照明 】なら
『 開口 』を小さく抑えられる

このおさまりのメリットは「 開口 」を小さく抑えられること。
通常コーニス ( B ) では 開口 150 mm が必要ですが、
廊下のような間口の狭い空間や L 字に設置した時のコーナー部分は、
この 150 mm の開口がとても大きく感じられることがあります。
【 ライン照明 】 ( A ) は発光面が直接見えますが、
器具幅ギリギリの細いスリットの中におさまるので、天井面をほとんど損なうことなく、
下から見上げても綺麗です。

A . ライン照明 開口30mm

B . コーニス照明 開口150mm

PLAN 03 . 間口5.5 mの大空間を
【 ライン照明 】で攻略する

山形に本社を置く【 シエルホームデザイン 】さんの展示場を 師匠のタカキヒデトシ 57 が頑張りました!
[ 間口 5.46 m / 奥行 10 m ] 緩やかな傾斜天井の大空間なのですが、空間が広くなればなるほど、当然、
照明器具の数も増えてしまいます。 まぁだいたい “ ダウンライトだらけ ” になってしまうと思います。
そこで師匠は【 点 】のダウンライトの位置に悩むのではなく【 面 】を照らす間接照明で効果的に
明るさをつくり、天井に『 余白 』をつくってしまうのです。

シエルホームデザイン
HIRASHIMIZU モデルハウス
照明計画:タカキヒデトシ57
撮影:松崎 典樹

【 面 】を照らす間接照明

傾斜天井を間接照明で照らす方法は
たくさんありますが、
器具から天井までの距離が近い
光がきれいではないので注意が必要です。

下向きに照らす

器具から床までの距離は一定なので、
壁面は美しく照らされている

上向きに照らす

器具から天井までの距離が違うので
光がムラになり、綺麗ではありません

撮影:松崎 典樹

ダイニングとキッチンで
天井高さが「 異なる 」

【 ダイニングの天井ライン 】で器具をおさめてしまうと、
壁にかかる光が開口部と壁面で異なってしまいます。
そこで師匠は【 キッチンの天井ライン 】で壁をフカして、
照明をおさめる隙間をつくってもらっています。

床から壁をフカすと、
押し出された壁の分だけ
床面積が小さくなってしまいますが、
天井から壁をフカシ、
下端を天井高さ揃えたので、
フカシ壁の圧迫感もありません。

壁両側にライン照明を配置。
鉛直面を照らして空間の
明るさを確保しているので、
この広い空間に
ダウンライトは 6 台のみ。
天井にたくさんの『 余白 』
残すことができました。

  • DDL - 6240YWG
    グレアレスユニバーサルダウンライト

  • DBL - 5594LWG
    アーキテクトベースラインミニ L1495

撮影:松崎 典樹

照明をぎゅうぎゅう に詰め込むのではなく、
『 余白 』をつくることを意識して照明計画を考えましょう!

「 師匠のような『 余白 』のある
照明計画にするには … 」

そんなことを考えながら、お弁当を詰めていたら
箱の中にも『 余白 』を作ってしまったようで、
食べる頃にはすっかり偏ってしまいました。