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2020.10
山内 栞
Interview
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ラ・ジェント・ステイ函館駅前
- Shiori Yamauchi
- 住宅デザイン部 東京オフィス
ホテルの照明デザインを担当されたそうですね?
住宅デザイン部の所属なので住宅を手掛けることが多いですが、最近では納入事例コンテンツで紹介している「ラ・ジェント・ステイ函館駅前」をはじめ、何件かのホテルも担当しています。
「人」が過ごす空間という意味ではホテルと住宅には多くの共通点がありますが、一方でホテルと住宅には、実現しようとして目指す“目的”の違いによる照明の“役割”に違いがあります。
ホテルの目的は「非日常性」であり、お客さまへの“おもてなし”が役割としてあります。住宅での目的は「日常性」であり、毎日の生活が“問題なく順調に進む”ことが役割としてあげられます。
両者の照明をとても簡単に言ってしまうと、ホテルでは非日常性の演出のため、見せたいところを強調して“明るさのメリハリ”をつくるプランが基本。住宅では、問題なく日常性を支えることが重要なので、全体を明るくするプランが一般的になります。
ホテルの照明と住宅の照明の違いを具体的に教えてください。
近ごろ「ホテルを思わせるような住宅」を表現する《ホテルライク》という言葉が流行していますが、照明に関していえばちょっと注意が必要です。
本物のホテルでは、一般的な住宅のように部屋全体を明るくするのではなく“明るさのメリハリ”をあえてつけることで「非日常性」を演出しているわけですから、その“気分を味わう”ときにはそれでもいい。ところが「日常性」を望まれるかたには、見せたいところを強調する“明るさのメリハリ”が、逆に『暗さ』として感じられてしまいます。
分かりやすい例として廊下の照明を見てください。
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住宅の廊下
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ホテルの廊下
住宅の廊下は、全体的になめらかな明るさにしますが、ホテルでは客室のサイン表示やドアを照らし“必要な部分を強調する”という計画をします。
明るさにメリハリがあると、ちょっと“ドキドキ”しませんか?
「自分の部屋はどこかな?」と、“ドキドキ”気分を高めながら探してもらうことが照明計画の意図にあるためです。 そういう効果を狙ってつくっているのです。
さらに、ホテルと住宅では廊下幅が違います。住宅は一人が歩くことを前提としていますが、ホテルは最低でも二人がすれ違うことができるよう廊下幅が広いのです。
住宅でも、規則正しく並ぶドアがあれば、そこだけを強調してメリハリをつけてもよいのですが、10人家族くらいの大きなお家じゃないとホテルのような廊下にはなりそうにもありません。なので“同じよう”にはなりますが“同じ”にはならない。と、いうことだけは理解しておく必要があります。そうでないと「イメージと違う~」ということになりかねません。
住宅でホテルライクな照明を取り入れるコツを教えてください。
ホテルでは「非日常性」の演出が求められていますから、照明器具自体を目立たせないようにするため、建築や造作家具と一体となった『間接照明』が多用されます。実はホテルって、見えないところにもすごくお金をかけているんです。
だから「うわぁ~素敵」ってなるんですよねぇ。
住宅の場合、見えるところ全部にお金をかけたくなる傾向が高いので、見せ場がどうしても分散してしまいます。
できれば滞在時間の長いダイニングやリビングなど、ポイントを絞って間接照明などの見せ場をつくってあげることをお勧めします。
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ホテルの客室
ホテルの見せ場、あるいは見せたいところを強調して“明るさのメリハリ”をつくるためには光を上から照射する必要に迫られます。
そのために天井面へダウンライトを埋め込むのですが、一見するだけでは「どこについているの?」と思ってしまうように、存在をわかりにくくしていきます。
例えばこちらのホテルのエントランスでは、ガラスの柱が際立つようグレアレスダウンライトで照らしました。
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ラ・ジェント・ステイ函館駅前
一般的なダウンライトと見比べてみてください。
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一般的なDL
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グレアレスDL
一般的なダウンライトは「明るさを広くとる」目的がありますから、ダウンライト自体が光っています。ここで使用しているダウンライトは『グレアレスダウンライト』といって「光だけを出す」目的がありますから、ダウンライトが光っているのかさえもわかりません。
その見え方を“カッコイイ !”と私は思うのですが、「日常性」を求める住宅では“暗い”と感じる方もいらっしゃいます。このイメージの違いを間違わないようにしてください。
大阪オフィスの先輩・土井が手掛けた物件では、そのどちらも採用しています。
「日常性」を求めるときには一般的なダウンライトを点灯させ、「非日常性」を求めるときにはグレアレスダウンライトを使用します。両方の空間を実現するのであれば、このような発想が住宅の照明には必要になりますから、参考にしてみてください。
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一般的なDL(温白色)
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グレアレスDL(電球色)
「ホテルライクな暮らし」を演出するとっておきの技を教えてください。
造作家具の工事が必要となりますが『光壁』が素敵です。
間接照明の一つで、乳半アクリルなどのパネル裏に照明器具を設置し壁自体を光らせる手法です。アイキャッチ効果があるため、ホテルの受付で採用されることが多いです。私の担当したホテル現場でも、受付カウンターの両サイドを『光壁』にすることで華やかさが増し、より印象的なエントランスとなりました。
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ラ・ジェント・ステイ函館駅前
実はこの手法、住宅でも効果的なんです。こちらは住宅のリビングに採用してもらいました。柔らかい光が広がり“格子模様”が浮かびあがることで、和の趣が感じられる上質な空間に仕上がりました。
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事例詳細はこちら
住宅では拡散タイプを使用するのが一般的ですが、こちらはあえて店舗で使用する集光タイプ(20°)を設置しました。集光した光で上下から照らせば、広い範囲の壁を効率良く照らすことができます。50mmの幅があれば設置できるので、壁の奥行きがあまり取れない住宅でも使いやすいですよ。
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山内 栞 ● もう1つのとっておき!
オーダーメイド個別調光器
ホテルライクな空間とは、広い寝室を中心にした間取りや、バスルームと寝室をひと続きの動線で構成したり、空間に仕切りを設けずゆったり使うことがあげられます。
そこで、 ホテルのような「寝室」 にしたい方への“秘策”があります。
ホテルのベッドヘッドには、枕もとで操作できる「スイッチパネル」と「スタンド」がありますよね。その便利な機能を、部屋のインテリアに合わせて自由にオーダーメイドできるものをご用意しました! それがこちらのオーダーメイド調光器です。用途に応じて接続器具の数や調光パターンなどを自由に組み合わせることが可能です。実は表示ピクトの「絵柄タイプ」のデザインを私が担当させて頂きました。優しいデザインであることと、分かりやすさでお客様から好評を頂いています。
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文字タイプ
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絵柄タイプ
■仕様決定の流れ
1 取付場所
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2 パネルのタイプを選択
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3~10 機能を選択
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11 パネルの材質/仕上げを選択
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12 表示ピクトを選択
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■プラン例
ゲストルームのタイプや機能、シーンに合わせて最適な調光制御プランを実現できます。
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ベッドの両サイドに横型コントロールパネルを設置し、部屋全体の調光が可能です。
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コロナ禍での仕事は、どのように変化していますか?
コロナ禍で、みなさん大変な日々を送られていることと思います。私たち住宅デザイン課のメンバーも、テレワークの日があったりと新しい日常へシフトして仕事をしています。
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大きく変わったのは、セミナーですね。たくさんの方に集まっていただくようなセミナーは開催できないので、6月からオンラインセミナーを始めました。みなさんの反応がわかりづらく戸惑うこともありますが、出張の必要がないので、遠方の方や、少人数での開催もフレキシブルにできるようになったのは、とてもよかったと思います。他のメンバーもオンラインセミナーに取り組んでいて、高木チームだけで40本以上のセミナーを開催した月もあるんですよ。
照明プランのご依頼は、これまでとほぼ変わりなくさせていただいています。春頃からはプール付きの邸宅など、リゾートホテルのような物件も増えてきています。旅行に行けない方が、Stay Homeを楽しむためのご自宅を建築されるのでしょうね。こういった案件では、ホテルで培ったプランの実績が活きてきます。
コロナの時代は、『家』の役割が再認識される時代かもしれません。DAIKOでは、住宅やホテル以外にも、様々な施設・店舗のプラン事例が多数あるので、どのようなご要望にも、お応えできます。「難しいかな?」「無理かな?」と思っても、ぜひ一度ご相談くださいね。私も微力ながら、照明を通して、一人でも多くの方のStay Homeをより充実したものにできるよう、お手伝いしていきたいと願っています。