■ 審査委員:講評
大草 徹也(建築家 / 三菱地所設計)
今回の募集作品テーマが「人に優しいランドスケープのあかり」ということもあり、各作品とも照明器具自体のデザインを競うというよりも、照明によっていかに周辺環境をドラマチックに変えることができるかという試みが多かったようです。
最優秀賞の「anklet」は、身近な存在の電柱を都市のランドスケープと捉えた点が面白く、既成の電柱用ステンレスベルトの穴のピッチとLEDのピッチが偶然一致し、会うべくして出合ったとの話をプレゼンテーションで披露頂きました。都市景観としては邪魔な存在の電柱が、美しい光の輪の連続する路面を創り出すという発想が素晴らしかったと思います。
草花が風でなびく様を照明器具で表現しようとした作品が多くありましたが、その中でもリアリティを最も感じたのが優秀賞の「Wind : Light」でした。プレゼンテーション時には、実際に風でなびくとセンサーが作用し照度が変化するところをモックアップで実証し、グラフィックも詩的な表現で審査員に強い印象を残した作品です。 「grass light」も風で揺らぐ照明でしたが、蓮のように雨水が溜まり、それが流れ落ちるという繊細な提案です。「Soft Seeds-やわらかなタネ-」は、ふわふわのインテリアソファーのような有機体を外部用にしたベンチで、実際に実用化したい作品でした。「ふるまうひかり」は、7作品の中で唯一まちをテーマにした提案で昼と夜との反転性を表現してくれています。「浮水光」は、日本庭園の池の水中を照らす浮かぶ照明器具です。有線で電源供給する提案でしたが、岸辺に設置された電源供給母体に充電しに戻ってくるような無線の提案だったらより面白かったと思います。DAIKO賞も受賞した「夜露朝霧」は、二重構造の球体のガラスに夜露が付き、それを照明が照らし出すというポエティックな提案で、ランドスケープと照明との関係性の奥深さを表現してくれました。