■ 委員長:講評
面出 薫 ( ライティングデザイナー / 株式会社 ライティング プランナーズ アソシエーツ )

今年のあかりコンペのテーマは「見えないスタンド」。審査委員長の手塚さんが謎解きを掛けたと思われる。しかも「LED照明プロダクトコンペ」と付け加えてあるので難解だ。
実用的で売れる製品提案を求めていながら姿かたちが見えない…。ダウンライトならともかくスタンドライトで。

私が最も気に入ったのは「線香ライト」だった。最後の投票で最優秀にはならなかったが秀逸だと思った。普段は小さな置物だが、気持ちをゆったり落ち着かせたい時にだけ線香に火を着けあかりを点灯する。周囲の空気に敏感に反応し形を変化させながら立ち上る煙。それをLEDのナローな光が照射している。天井に映し出されるだろう煙の影も興味深い。「仏壇にでも置いておくの?」という質問も出たがそうではない。これは輝くテレビの横にでも鎮座させ、喧騒から逃れたい時に部屋を暗くして楽しむためのスタンドライトなのだ。
私は空を流れる雲に心を奪われることが時々ある。一時として同じ形をとどめずに移動する状況は線香から立ち昇る煙も同様で、火も煙も嫌がられる昨今が恨めしい限りだ。この作品を説明された時にそのように心を奪われた。

最優秀賞の「あかりを求めると現れるスタンドライト」はコンセプトも明確でプロダクトデザインの完成度も高いことが評価された。照明としての実用性より「使い終わったらここにきちんと戻してくださいね」というインジケーターとしてのお洒落が気持ちいい。このコンセプトに従った製品アイデアは無限に広がりそうだ。あかりと人が生活の中で軽快に対話する。そんな時代を迎えたことを語っている。

残念な作品が2点あった。猫を照明器具に見立てた「誘う灯」と、抱き枕のような読書灯「わたしから照らす」だ。着眼点やコンセプトは良いのだが発想を執拗に追いかけていない。アイデア倒れの詰めの甘さは致命的だ。二次審査に残ったのだから、審査員が唸るようなモックアップモデルとプレゼンテーションをして欲しかった。お二人にはデザイナーとして一層の精進を期待したい。