■審査委員長:講評
西沢立衛  (建築家)

権藤弘之さんの「あかるい町のくらやみ灯」は、明るすぎる世の中でそこだけ暗闇をつくりだす照明器具の提案で、最も多くの審査員に支持され、みごと最優秀賞に輝いた。具体的でリアリスティックな発展があるとなお良かったが、現実化の方法を度外視しても、コンセプチュアルな部分の鋭さが高く評価された。
優秀賞のLiさんChenさんの「URBAN PENDANT」は、傘のような雲のような大きな照明器具が場を作り出すという案で、個人の快適性を追求する提案が多い中、公共空間につながる社会性のある提案で、大変素晴らしく感じた。
青木さん「あかりの折り紙」は、照明器具デザインとして一番リアリティがあった。最終審査で原寸実験体があると良かった。
武井さん「自然を受け取る風の光」は、軽やかかつスマートな照明器具の提案で、自然との融和が魅力だ。懸垂曲線以外にも使用例・応用例に豊富さがあったり、またディテールの検討などがあれば、もっと評価が上がったのではないかと思う。
合屋さん「中心/シェードなしペンダント」も、具体的な器具の提案で、説得力があった。他方で、配線その他気になる所がいくつかあり、これも原寸実験勝負の案かなと思う。
竹内さん「風呂四季ペンダント」は、日本文化の根源に迫るデザインで、個人的には一次審査で最も推した提案であった。最終審査での発展がなかったのが本当に残念だ。
落合さん「あかりの澱む場所」はカーテンが光るというもので、実現すると面白いと感じた。
本コンペは、審査が二段階にわかれているということもあって、やはり一次の書類審査で感じられた可能性を、二次の公開プレゼンテーション審査でどう発展できるか、そのジャンプ力は一つ重要なことだと思う。何れにしても、全体的に魅力的な提案が多く、大変楽しい審査で、大いに盛り上がった。