本年のコンペの題目が、製品化を明確な目的とした「ブラケット」であったため、当初は形のデザインを提示する案が多く集まるものとみていた。しかし実際には、未来への期待や夢を求める提案が多数を占めることとなり、改めてプロダクトデザイナーではなく、建築家のアイディアコンペであると再認識した次第である。
一次審査の段階では、廣島案、井原案、神田案が代表する、自ら輝く手のひらサイズ程度の照明器具を壁面に自由に配置する案が非常に目立った。二次審査では、各自ともに実際の器具の模型やモックアップを持参したが、一次審査での期待をいい方向に裏切れた作品が最終的に賞を獲得することとなった。本物の光はインクよりも強い。
佳作5案:山下の新たな建築素材として夢のある提案、山中の“ぱたぱた“が生み出す光の面白さに注目が集まった案、神田の有機ELパネルを花のように展開する案、松岡の建築的にブラケット再構築し風景に取り込む案は、二次審査まで進化させた魅力に乏しかったことが共通して惜しい部分であった。いずれも着目点は素晴らしいものだっただけに、日を開けた二次審査では、さらなる驚きと発見を審査員に与えてほしかった。最優秀賞の廣島、優秀賞とDAIKO賞の助川の案は、二次審査におけるプレゼンテーションにおいて、新たな魅力と臨場感を審査員に届けることができたことが高評価となった。
助川案:見た目は何の変哲もない半球型のブラケットであるが、その輝き方に月の満ち欠けを加えるだけで、ブラケットと人とのコミュニケーションを生むことができることを上手に示していた。また病室など推奨する使用空間まで言及するなど、よくアイディアが練られていた。
廣島案:一次審査の段階では、いろいろな方向に光を出せる光のユニットという印象どまりであったが、二次審査で具体的な実演動画を用意することができ、具体的で実用的な使用方法を審査員にアピールできた。さらに未来的なブラケットのあり方をも提示できていた優秀な案であった。