■審査委員:講評
吉野 繁 氏 (建築家)

今回の公開2次審査対象の7作品の内、1次審査で自分が推薦したものは、山下案「ELW t=6.8」と山中案「Between Equipment and fabric」と井原案「小さなブラケット」の3作品でした。2次審査においては、7作品ともモックアップをプレゼしていただきましたが、その出来栄えに審査の影響が出てしまわないように意識しながらも、本コンペの目的のひとつである「製品化」への想像力を働かせながら拝見させていただいた。山下案については、網という「−」のものを「ゼロ」にしようとする試みであり、モックアップも「ゼロ」の可能性が見えていました。が、分かっていても、内心「+」なものを期待していたのかもしれない。山中案は、照明と織物的という斬新な組み合わせで、小さなモジュールが古い玩具のように回転しながら照明が連続点灯するという画期的なものです。点灯時にノスタルジーを感じた後、織物というコンセプトが薄まってしまった点が残念。井原案は、多数提案のあった、どこでも自由に点く照明という提案のなかで、最も小さく、かわいらしい照明デザインでした。(壁の好きな場所にスライムを投げつけて、これが照明です、みたいな案が内心好きだったのですが、)結果的には、コンセプトが近い廣島案「Xi light」が最優秀案になりましたが、僅差という印象でした。
最後まで競い合った廣島案と助川案「Moon light」ですが、どちらもロマンチックな案で、助川案は、月の満ち欠けの変化をブラケットで再現し、例えば自分や彼女の誕生日の月の満ち欠けをめでることが出来る案です。廣島案は、あたかも灯籠流しのような儚さを持った照明を壁の好きな位置にセットできる照明です。この2案が最後まで競い合いました。
どちらか好きな照明器具をブラケットとして自分の部屋の壁に付けてもいいですよ、と言われたと仮定しました。位置が固定され、満ち欠けだけの月のイメージより、好きな位置にその時の気分でセットできる壁灯籠流しを選ぶかなと考え、廣島案に一票を投じました。