Pro's way

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2016.09.01

奈良の薬師寺

こんにちは、大阪TACTデザイン課の山口です。
今回は昨年私が担当させて頂いた、奈良の薬師寺での仕事を紹介させて頂きます。

薬師寺は奈良県奈良市西ノ京町に所在する寺院で、
およそ1300年前に創建され、東大寺や法隆寺と並び、南都七大寺の一つに数えられます。
薬師寺の中には東と西とに二つの塔があり、昨年、西の西塔に「釈迦八相像」が納められ、その照明演出のお手伝いをさせていただきました。

「釈迦八相像」とは仏教を開いた釈迦の生涯を8つの劇的な情景で再現したもので、
今回の計画では釈迦が悟りを開き、亡くなるまでの後半の4つの場面である
「成道(じょうどう)」・「転法輪(てんぽうりん)」・「涅槃(ねはん)」・「分舎利(ぶんしゃり)」が納められました。

一面につき、横4M縦3Mの巨大なブロンズで描かれています。
彫刻は文化勲章受章者である彫刻家中村晋也氏により八年がかりで製作されました。

ブロンズ像だけでなく西塔自体が価値ある建造物であるため、照明器具を設置する際、内装材へのビス止め等の固定ができず、有効な照明と器具の設置とを両立させるための検討を繰り返しました。

ブロンズ像に対して上部からスポットライトで照射する為に、特注金具を製作し、梁を傷つけずに上下から挟み込むような形で固定を行い、下部に配線ダクトレールを設置しています。
この他にも照明の眩しさを抑えたカバーなどを製作し、器具の存在を極力隠しながら、ブロンズ像の形状や、シーンのイメージに合わせて様々な明るさや配光のスポットライトを組み合わせてライティングを行いました。

西塔内の明るさは、ブロンズ像への照射の明かりのみで構成されています。
ブロンズ像の持つ厳かで壮大な雰囲気を明暗で引き立てつつ、来場者の視線や動線なども考慮して、計画を進めました。
個別調光や配光角度・各種レンズの使い分けにより、繊細でドラマチックな明かり環境を演出しています。

それぞれのシーンに合わせ、何度もライティング調整を繰り返し、ようやく作品にフォーカスされた照明空間に辿り着くことができました。
大変難しい現場でしたが、貴重な経験をさせていただきました。
9/16(金)よりおよそ二か月間特別公開が行われますので、奈良に行かれる機会があれば是非ご覧いただきたいと思います。

※奈良大本山薬師寺へは近鉄大和西大寺駅で各駅停車天理行きまたは橿原神宮前行きに乗車。西ノ京駅下車すぐの場所です。