Pro's way

住宅照明のヒミツ

36

2023.08

富和 聖代

Interview

進化する線の光 EVOLVING LINE OF LIGHT 富和 聖代

Masayo Tomiwa
住宅デザイン部 大阪オフィス

一枚の紙に何かを描くとき、最初に記されるのは『 点 』です。

点は次元を持たず、空間も占めないので、ゼロ次元の存在です。
だから点には、内も外もありません。
点は、そのあとに続くすべての源で “ 小さな丸 ” で表示されます。

一次元の『 線 』は、点に二つの原理が生じると現れます。

「アクティブ」 Active 活 動 / 能動、「パッシブ」 Passive 不活動 / 受動

点が、その点自体の外部にあるどこかを選ぶと、
《 方向 》が決まります。

“ 点が分離 ” を起こすと『 直線 』が生まれます。

線は太さを持ちません。
線には終点がないとも言われています。

そしてここから、三つの道筋が生まれ 二次元が始まります。

『 円 』
線の一方の端が、静止「 パッシブ 」で、
もう一方の端が、自由に回転すると、
『 円 』 ができます。

『 正三角形 』
動く「 アクティブ 」な点は、
ほかの二点から等距離にある、
第三の点に向けて動くことができ、
三点の距離がいずれも等しいとき、
『 正三角形 』 ができます。

『 正方形 』
線からもう一本の線が生み出され、
それが、最初の線から、
垂直方向へ平行移動で離れていって、
両者の距離が、
最初の線分の長さと等しくなったとき、
『 正方形 』 ができます。

『 円 』『 正三角形 』『 正方形 』と、いう三つの形が現れました。
この三つは、いずれも豊かな意味を持っています。

みなさん、こんにちは。
住宅デザイン部 大阪オフィスの『 富和 聖代 』です。

新カタログ【 D.LIGHTING STYLE 】は、
もうご覧頂けましたでしょうか。
巻頭のページ《 LIGHTING COMPOSITION 》では、

“ 点・線・面 ” の光で理想の空間をつくる

をテーマとして、実際にセットを組んで検証した事例を掲載していますので、
今回は少し、
“ 点・線・面 ” にまつわる【 幾何学 】的なお話をしたいと思います。

ダウンライトにおける “ 点と線と面 ”

ダウンライト1台ではただの《 点 》です。
ダウンライト2台から《 線 》があらわれ、
2台が『 集中 』すると《 点 》の “ 柄 ” へ近づいていき、
2台が『 分散 』すると独立した《 点 》の “ 柄 ” になります。

そのときの『 集中 』と『 分散 』は、距離のバランス。
“ 人が思い描く感覚 ” からかけ離れないことが重要です。

の位置はを中心とする回転体で、
と青の距離によって “ 柄 ” が決定します。

タテに見えたりヨコに見えたりするのは、
「 人がどこから見るのか 」によって変化するだけです。

ダウンライト3台から《 線 》が強調されていき、
ダウンライト3台から《 面 》が生まれてきます。

ダウンライト4台から、造形は “ 複雑さ ” を増していきます。

ダウンライト4台でも《 線 》と《 面 》は変わりませんが、
距離を離しすぎると “ 間が抜ける ”

ダウンライトを2台ずつで構成すると《 線 》にも《 面 》にも、
装いを変えていきます。
ダウンライト2台を “ 平行に配置 ” すれば《 線 》となり、
ダウンライト2台の “ 角度を変更 ” すれば《 面 》となります。

60Wのダウンライトでの『 見た目の分散配置 』と、
60Wのダウンライトでの『 計画的な集中配置 』と、
100Wで台数を削減した『 計画的な集中配置 』と、
“ 三種類の配置 ” をそれぞれ比較してみてください。

100Wの集中配置が、シンプルな《 線 》として、
空間になじんでいることが確認できると思います。

  • ダウンライト60W×19台=1140W 分散配置の場合

  • ダウンライト60W×18台=1080W 集中配置の場合

  • ダウンライト100W×12台=1200W 集中配置の場合

夜空に輝く星座に例えてみます。

現在使われている星座は、約5000年前のメソポタミア地方の羊飼いたちが、
夜ごと星空を眺めながら、明るく輝く星々を結んで《 動物や英雄たちの姿 》を、
星空に描いたのが始まりだ。 と、されています。

実際の夜空には《 面 》も《 線 》ありません。
天( 点 )でバラバラの星たちばかりなので、
何の星座が見えるのか皆目見当がつきません。
1928年に国際天文学連合で、全天の星座を、
『 88星座 』と定めました。
左図には、その中の一つの星座が現れています。

上図から、明るく輝く星を《 線 》で結びました。
余計な星々を消すと、何やら形が見えてきます。
実は「 サソリ座 」が潜んでいたのですが、
私にはまったく、サソリには見えません。
古代の人たちの想像力には脱帽です。

イラストによって、
サソリの形態を《 面 》で表現してみました。
これだと私は「 あっ!サソリだ 」と、やっと、
始めて認識できます。
でも正直「 無理やりだなぁ 」とも思います。

「 エボリューション 」evolution “ 進化 ” する《 線 》の光

《 点 》でバラバラの図形たちは、三角形や四角形といった “ 間 ” を生み出します。
そして、人が思い描く感覚からかけ離れてしまうと “ 間が抜けて ” しまいます。
そこで私たちは《 点 》でバラバラのダウンライトたちが、直線で構成された空間に、
“ 思いがけない間 ” を作ってしまわないように《 線 》の配置をオススメしてきました。

内装材や躯体など、空間を構成する要素のほとんどは、直線で構成されています。
この直線に沿って光の 《 線 》 を設置することにより、
「 空間自体の魅力をさらに引き上げることができる 」と考えたからです。

今回、ここで言う《 線 》の光は【 ライン照明 】を指します。
LEDの進化と共に、ライン照明の器具は『 ダウンサイズ 』downsize で “ 小型化 ” し、
発光面は『 ドットレス 』dotless で『 シームレス 』seamless 。
すなわち、LED特有の「 ツブツブ感が無い 」うえに「 連結しても光が途切れない 」
ようになりました。

器具を天井に埋め込めば “ 美しい光のラインだけ ” を見せることができます。
この手法は空間が洗練された印象に見えるため、近年、商業施設やオフィスでの採用が
増加していて、住宅でも取り入れられる機会が増えています。
そこで、いくつかの事例を紹介いたします。

《 線 》の光で空間の奥行きを強調する

28畳の広いLDKで、天井は板張りの空間です。
通常はダウンライトで計画することが多いですが、これだけ広いと台数が多くなり、
せっかくの板張り天井が穴だらけになりがち。
そこで今回は、長手方向に 2本の《 線 》の光を通すプランとしました。
板張り方向に沿わせることで “ 奥行き ” を強調し、
広がりのある空間を作ることができます。

「 コンパクトライン 」 を使用すれば、
幅 20mm、高さ 30mm の小さなスリットでも設置可能。
天井面に馴染みながらも、空間全体に柔らかな光を広げます。

見ための明るさ感を作りたい時は、
《 線 》の光を壁近くに設置するのがオススメ。
壁面をやさしく照らすコーニス照明のような
光となり、空間のアクセントとなります。

壁から450mm

《 線 》の光で吹抜け空間に一体感を与える

続いて吹抜け空間の計画。28畳のLDKで、吹抜け部分は 7畳です。
大きな窓が多い吹抜けのため、ブラケットでの計画は不向きな空間と言えます。
こちらはリビングの吹抜けの際に沿わせながら、
LDKにまたがって 1Fの天井に 1本の《 線 》の光を通しました。
さらに吹抜けの 2F板張り天井も 1Fと平行に《 線 》の光を通しています。
このことで、1Fと 2Fの天井面の見え方と光の質が統一され、
空間に一体感が生まれました。

新商品「 アーキテクトベースライン 」を幅 50mm、高さ 70mm のスリットに設置。
ドットレスな発光面の器具なので、美しい光のラインを作ることができます。
また、ハイパワーな光のため、
4500mm の広い間口の空間でもしっかり壁まで光が広がります。

複雑な天井形状での器具の整理

広い空間の一部が吹抜けている場合は、1Fの天井面が複雑な形状となる場合が多く、
ダウンライトで計画することが困難。
例えば左のように家具の配置にとらわれて計画すると、
バラバラな印象になってしまいます。
この場合、右のように全体に目を向けて天井に芯を設け、
集中配灯で整理すると美しく仕上がります。

さらに【 ライン照明 】にすると、ダウンライトの配置に悩むことなく
天井面をすっきりと整理することができます。
ぜひ真似してみて下さい!

《 線 》 の光で空間の輪郭をなぞる

最後に《 線 》の光を取り入れた実邸のご紹介です。
お家の中に『 三角屋根のお家 = リビング 』がある、遊び心のある住まい。
天井をキレイに見せるため、ダウンライトは付けず、
傾斜天井の頂点に 1本の【 ライン照明 】を設置しました。
この《 線 》の光のおかげで、
空間の輪郭を印象的に浮かび上がらせることができたと感じています。
ダウンライトでは実現できない、建築の特徴を生かした計画です。

大阪府 H様邸

設計 : 積水ハウス大阪中央支店 宮﨑 昂太
照明計画 : 富和 聖代
営業担当 : 西尾 彩音

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今回【 線の光 】 をご紹介しました。
新カタログにはこの他に【 点の光 】【 面の光 】についても掲載しています。
ぜひ照明計画にお役立て下さい!

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