■審査委員:講評
石井リーサ明理 (ライティングデザイナー)

第11回建築家のあかりコンペには、予想以上の応募があり、審査中も大変興味深い議論が繰り広げられました。
非常に面白い提案がいくつもあった中で、予選を通過した7作品の公開審査を経て、最後に最優秀賞と優秀賞の2点が選出されたわけですが、それらの内容に対する評は、他の審査委員の方々にお任せするとして、私は審査プロセスの中で、「足りない!」「おしい!」と思ったことをいくつかあげたいと思います。今回応募した方や、次回応募しようと考えている方々への参考になれば幸いです。

・似たような提案が他にもあると想定する。
現に、似たような提案を出した方が複数いるケースがいくつも見られました。例えばペンダントを紐状にして空間に張り巡らせる案とか、持ち運びできるようにしたペンダントの案とか。そのような時、審査委員は何を評価するか、想像してみてください。ビジュアルが魅力的であること、実現可能な技術的説得性があること、パネルの表現がわかりやすいこと、同じような案でもさらに工夫があるとかヒネリがあるとかの「プラスアルファ」があるかどうか、など。似たような中から傑出するのは、割と難しいことですが、「最後のもう一歩」の付加価値付けを心がけるとよいかもしれません。

・アイディアだけではなくて、具体的な実現策を講じる。
優秀な作品は製品化が視野に入れられているコンペであることから、机上の空論だけではなく、実際に製作する際にどういう素材で、どういう製造方法で、どういう光源を使って実現されるのかなどをどこまで考えられているか、が評価されるのは明白です。ものづくりをする人は、創造力と実現力の両立を目指さなければいけないことを、常に考慮に入れておいてください。

・モックを作る。最終に残ったら、これは必須。
今回の入賞作品プレゼンテーションで、最も審査員が不満に感じたのは、モックアップ(模型)を作ってくる方が非常に少なかった点でした。3次元の形を紙に描くことは容易いけれど、本当に綺麗な形になるのか、自立するのかなど、課題は多いはずです。さらに、光を入れるとなると、光源や電線の組み込み方、光の透過具合など、やってみなければわからないことは山ほどあります。それを試してみないでコンペに応募すること、さらには最終プレゼンに望むことは、審査員たちにしてみれば「信じられない怠慢」に見えても仕方ないのです。

・魅力的なプレゼンをする。
最終プレゼンテーションはパワーポイント映像などを使って行われました。短時間で効果的に、心をつかむプレゼンをすることは簡単ではありません。が、パネルに書いてあるのと同じことを淡々と話したり、光に関係のない部分の話に終始したりするのは得策ではないのは言うまでもありません。1次審査を通過した参加者には、2次審査までに次のステップに進んでいることが期待されます。

・飛躍したアイディアには、社会的責任と、テクニックとポエジーを。
今回選ばれた最優秀賞と優秀賞は、いずれも具体的な製品化が難しく、ある意味では従来のペンダントライトの概念を超越した提案でした。こうした飛躍したアイディアが評価されるのも、このコンペの意義深いところだと思いますが、かといってぶっ飛んだアイディアを出せばいいというものでもありません。今回の上位入賞2点は、いずれも社会的問題や環境問題などを背景に深い考察があった上で、編み出されたコンセプトを元に、そこに情緒的で詩的な表現が加えられたり、技術的な実現可能性が含まれたりしていたところに、評価が集まったのだと思います。

実は今回の結果によってはこのコンペ、今年で中止される可能性もあったそうですが、予想を上回る反響があったため、来年も続行になると聞いています。今後とも、建築家の中で、あかりに対する認識が少しでも高まるよい機会として、存続していただけることを期待していす。